最近マンガを整理していたら池上遼一の「スパイダーマン」が見つかったので紹介します。前回紹介したのは
蜘蛛の能力を持った女子高生の話である「アラクニド」なので、蜘蛛つながりということでちょうどいいですね(笑)。
[書籍データの取得に失敗しました]
さて、池上遼一のスパイダーマンは40年以上前の作品で、原作の舞台であるニューヨークではなく、舞台は東京で、日本人の平凡な男子高生がスパイダーマンになるというオリジナル色の強い設定になっています。
池上遼一といえば「サンクチュアリ」を思い出すのですが、あの作品はアウトローであっても強い目的意識に支えられた行動的な主人公達が世界を変えていくことに挑戦するある種のダークヒーロものであると考えられます。
池上遼一のスパイダーマンは、原作とも異なり、主人公が持っている強力な能力を人々の役に立てるヒーローではありません。誰にも止めることができない強大な力を持ってしまった平凡な個人が、内に秘める欲望や狂気といったものを恐怖しながら、懸命に抑えようとする苦悩する様を描いた作品です。
私の生まれる10年以上も前の作品であるため、この作品で描かれている時代(1970年頃)の醸し出すやや退廃的な雰囲気は実感として理解することは難しいのですが、スパイダーマンになったことである種のアウトローとなった主人公が、その強力すぎる能力を恐れながら、時に力を行使し、時に行使しない様は、巻き込まれる事件がどれもある種異様な雰囲気に包まれていることもあって、ものすごい迫力を持っています。
日本にはアメリカにあるような「正義とは何か」というシンプルな命題が成り立ちにくく、原作のスパイダーマンでも出てくる「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というようなメッセージは届きにくいところがあります。サンデル先生(※)を呼ばなくては・・・と思うところですが、日本流のヒーローというのはある意味、この作品に示されているような姿なのかもしれません。
荒削りですが面白い作品なので、一度手にとって見て欲しい・・・のですが、Amazonでは中古しか手に入らないみたいですね。惜しい話です。kindle化してくれるといいのですが。。。
※ 知らない方はマイケル・サンデルの白熱教室を調べてみてください。