弾氏が面白いエントリを書いていらっしゃるので、私も思うところを書いてみます。

発端は、分裂氏がプログラマの労働条件を過酷にしているのは、プログラマが労働力のダンピングをしているからであるという議論を始めたことです。それに対して、弾氏がプログラマを労働者よりは作家や芸術家に例えています(労力と成果の関係があまりに非線形であるため※)。

※ 労働者=労力に対して対価を受け取る人と定義しています。

404 Blog Not Found:プログラマーって本当に労働者なのか? より

百歩譲っても、プログラマーというのはメタ労働者ではあっても労働者とは言えないと思う。厳しいようだけど、労働者として扱ってもらいたかったら、プログラマーではなく別の職を選ぶべきだと思う。少なくとも、それを本職にするべきではない。


弾氏の気概を感じますね(笑)。弾氏も分裂氏もプログラマは主体的に自己の労働環境の改善をしていかなくてはならないという点では共通しています。

立石氏は少し立場を変えていて、プログラマをひとくくりにしないで、芸術家的な要素を持つプログラマ(立石氏は「開発型」と呼ぶ)とそうでないプログラマ(「生産型」「運用保守型」)を分けて考えましょうと提案しています。(後者は労働者という考え方です。)

で、私の考えです。私は「プログラマは主体的に自己の労働環境の改善をしていかなくてはならない」というメタな点では、分裂氏にも弾氏にも賛成です。ただ、立石氏のエントリにもあるように多様性を認める必要があると思います。
弾氏にせよ分裂氏にせよ、抜群に優秀なエンジニアじゃないと成り立たない議論をしているような気がします。そういう気概を持つことはすごく大切なのですが、労働者として安定して働きたい人も多いはずです。エンジニアは自分がどう働きたいのかを明確にした上でそれを発信していくことが必要なのだと思います。
# でも、会社に居たときから「エンジニアの自分自身が働く環境に対する意識の低さ」は気になっていました。

■ 議論の流れと関連エントリ
分裂勘違い君劇場 - プログラマの労働条件を過酷にしているのは、過酷な労働条件を受け入れるプログラマです
http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070216/1171627060

404 Blog Not Found:プログラマーって本当に労働者なのか?
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50766218.html

コンサルタントのネタモト帳+(プラス) 人月神話:「プログラマー」は労働者?芸術家? ~ ほぼ日刊で「経営の話題ネタ」を名古屋から発信!社労士・診断士のコンサルタント立石智工のビジネスヒント集
http://blog.goo.ne.jp/tateishi_awing/e/a71aa46b86aac6d9df78aa73a37e4dda

404 Blog Not Found:俳優と脚本家
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50766689.html

Posted by あかさた
前にも少し触れましたが、今、ネット上では生産性に関する議論がなされているようです。
# 多分、もう決着はついたと思いますが・・・。

下にネタもとのリンクを貼っています。いわゆるアルファブロガーに相当する人しか追っていません。あまりに議論が膨大なので。(--; 多分、議論は生産性と賃金についてです。賃金は当人の生産性によって必ずしも決まるものではなく平均生産性から決まる(by 山形氏)という話題から始まって、紆余曲折あって、賃金は限界生産性(※)によって決まるという結論になって終わります。結論が出た後は、富の分配システムの方に議論が行ったようです。

これだけ盛り上がったのは、いわゆる炎上に近い現象が発生したと考えて良さそうです。経済関係の議論の問題点として、複雑なケース(たいていの現実は複雑ですが)になると、モデルを組むことが難しくなって議論が定性的になったり直感に頼るようになったりする(※※)ので、なおさら炎上しやすいのだと思います。(--; でも、私は皆さんが言いたいことはそんなに違わないと思っています。

※ 限界生産性とは、労働者を一人雇用したときに上昇する生産性のことです。SIer なら生産性=売り上げでいいと思います。間違っても生産性=書けるコードの量ではありません。SI は人月による人身売買ですから、何人売れるかで十分です。一人雇ったときに上昇する売り上げによって賃金が決まると言えば、直感的でしょう。

※※ 池田氏はモデルがシンプルなのでこうした罠にははまっていません。読み物としては山形氏のものが面白いです。

結論がわかりにくかったので、自分でも少し考えてみました。(結論をなぞっただけですけど。)

SIer の場合、限界生産性は横ばいに近い(人月でビジネスをするので、人数×単価で売り上げが決まる)のですが、研究開発などのイノベーションによって単価を上げることができる(=限界生産性を上昇させる)のなら、売り上げが上がって賃金も上がるというわけです。前の職場はそうしたロジックを大切にしており、単価を上げるような研究開発を継続して行っているため、単価&利益率は業界最高クラスです(※)。給料は中の上くらいですが。(^^; たいていの SIer は限界生産性は横ばいだと思うので、賃金も横ばいです。ただ、オフショアの浸透などが SIer の単価を引き下げる要因になるので、給料は下がっていくのかなと思います。
# だからオフショアの影響を受けにくい職種(要求とか PM とか)にエンジニアは転向しようとするのです。

※ このブログは前の職場の人も読んでいるので、一言警告を。この優位性は長くはもたない・・・つまり、抱えているイノベーションや新しく生み出しているイノベーションが相対的に価値が低くなっているので、会社におんぶにだっこではいずれ給料が下がっていきます。この方向性(技術の××)で行くのなら個人個人がもう少し意識を高く持つ必要があるんじゃないかな。え? 仕事が忙しいからムリ?? そもそも技術志向なんてやってらんない??? ま、そーだよねー。

ということは、SI に関しては単価の高い仕事に転向しないと給料は下がる一方だよ・・・と。プログラマは生きてけないよってね。上流志向の人ならいいけど、IT エンジニアになったらみんな上流に行かなくてはいけない・・・というのはちょっと窮屈です。(私は長くオフショアに関わったせいか、そういった窮屈感は感じなくなっていますが。)もっとも、池田氏の最後のエントリ(賃金格差の拡大が必要だ)が実現すれば生産性の高いプログラマなら生きていけるという話になって、技術屋にとっては技術力を磨くモチベーションになります。

池田信夫 blog 賃金格差の拡大が必要だより

労働時間で賃金を支払って年功賃金で会社にしばりつけるといった在来の賃金体系をやめ、優秀なプログラマには契約ベースで管理職より高い賃金を払う必要がある。


さーて、単価が下がってプログラマがいなくなるもしくはワーキングプアになるのが先か、優秀なプログラマなら生き残っていける社会が来るのが先か。どうしたもんだろ。

■ 議論の流れ
以下、議論の流れです。(めちゃくちゃ長いのでリンク先は興味のある人以外は読まなくていいです。)

2007/2/4
山形浩生 の「経済のトリセツ」  Supported by WindowsLiveJournal - ゴッドランドの経済学
http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20070204/p1

2007/2/11
山形浩生 の「経済のトリセツ」  Supported by WindowsLiveJournal - 生産性の話の基礎
http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20070211/p1

2007/2/12
池田信夫 blog 生産性をめぐる誤解と真の問題
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/cd4e52fd7cca96ac71d0841c5da0cb75

404 Blog Not Found:生産性より消費性
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50762325.html

2007/2/13
分裂勘違い君劇場 - アルファブロガーたちの地位争いが優良コンテンツを量産する
http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070213/1171359965

山形浩生 の「経済のトリセツ」  Supported by WindowsLiveJournal - それでも賃金水準は平均的な生産性で決まるんだよ。
http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20070213/p1

2007/2/14
池田信夫 blog 生産性と「格差社会」
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/b8b2dd3502ef769c7f5baf18143f53e1

2007/2/15
分裂勘違い君劇場 - 「他人の生産性が向上すると自分の給料も増えるのか?」を中学生でもわかるように図解してみました
http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070215/1171504603

山形浩生 の「経済のトリセツ」  Supported by WindowsLiveJournal - 山形より上手でていねいな説明をごろうじろ。
http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20070215/p1

404 Blog Not Found:生産性は誰のものか
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50765006.html

池田信夫 blog 賃金格差の拡大が必要だ
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/b697e23a80b6602167c2f5e43ebad041


Posted by あかさた
可聴域を計測するソフトウェアがあったので、私の耳の性能を測ってみました。以下のとおり(23950Hz)です。

1171380726_20070214_01.png
# 正答率が悪いのは 24000Hz に何度も挑戦して、何度も間違ったせいです。つーか、聞こえん。

ヘッドホンがないと 18000Hz くらいからきついと思います。20000Hz 以降は動作がおかしい(突然音が聞こえ出したりする)ので、あくまでお遊び用の道具ですね。

以下のサイトの左側のメニューに「自作ソフトウェア」という箇所があるので、その「可聴周波数域チェッカ」を DL してください。ダウンロードは一番下のページで見つけにくいので注意してください。

masudayoshihiro.jp
http://masudayoshihiro.jp/

■ 関連記事
窓の杜 - 【NEWS】どこまで高い音が聞こえるかをテストできるソフト「可聴周波数域チェッカ」
http://www.forest.impress.co.jp/article/2006/07/24/mimichecker.html

Posted by あかさた
秋元@サイボウズラボ・プログラマー・ブログによると、世界の経済活動を 3D にしたものがあるようです。日本・・・というか東京が異常に高い。あと大阪。

こうやって見ると、経済大国日本といっても、一部の地域を除けば、経済活動(GDP から計算しているらしい)はそれほど大きくないのが見て取れます。意外とアメリカは分散しているみたいですが・・・。

Posted by あかさた
こちらによると、養老孟司がウェブ人間論を読んだらしく、以下に書評が載っています。ぶっちゃけ、この文章の方が本編よりも面白い・・・というのは冗談にしても、なかなか面白いのでおすすめ。

養老孟司のウェブ人間論の書評。
http://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/610193/review02.html

時代というものがあって、いまの時代は年寄りが威張る。そのつもりはなくても、生きている以上、ジャマになるのは仕方がない。そんな時代に若い人はどうすればいいか。いちばんまともな生き方は、年寄りがダメな世界で頑張ること。ならばウェブは格好の分野ではないか。


こういう視点は意外とわれわれの世代よりもかなり上の世代の方が持っている気がします。

関連エントリ
ウェブ人間論を読んだ

Posted by あかさた
立石さんのブログに書かれた内容を受けて、もう少しホワイトカラー・エグゼンプションに関する話をしたいと思います。

立石さんのブログで以下のように書かれています。

したがって、同じ「プログラマ・SE」と言ったとしても、「求められる成果」によって ●「開発」型 ●「生産」型 ●「監視保守」型 の3つに分類して考えていかなければ、「働き方のあり方」を考えることは難しいのではないかと感じます。


この分類は大変良いようです。

「開発型」(研究・開発系)は賛成です。

「生産型」ですが、以前から立石さんがおっしゃっているとおり、上流に携わる人(私の中では PM や要求、基本設計などをする人)はホワイトカラー・エグゼンプションなどがふさわしいでしょう。製造工程の後半以降では、フレックスは良いのですが、裁量労働はあまり適切ではないと思います。往々にして、裁量労働を導入すると労働環境が悪くなるのもこの工程です。労働の時間帯は選べるべきですが、労働量は裁量しようがないでしょう。

ただ、問題があります。この記事を参照してください。

しかし間違いなく、年齢がプログラマの報酬の大部分を決定している。


このような状況では、裁量にした方が得かもしれません。たとえば、一日に 10 の仕事ができる人がいるとします。ある人は 8 で、 ある人は 12 です。(このように数値化することが難しいことは重々承知しています。)その人の生産能力に応じて給料(というか時給)が決まるのなら、裁量である必要はありませんが、残念ながら、IT 業界ではそういったもので給与が決まる傾向はありません。(基本は年齢。)この三者に同じ仕事させると、スキルの高い開発者ほど成果あたりの給与が下がってしまうことになります。(優秀な人にはたくさん仕事がいくので、残業代も多くなり、給料自体は高く支払われるとは思いますが。)

つまり、裁量労働にして、給料と成果に相関をつけるほうが時間毎の給料という観点では得ということになります。もっとも、こうした議論は本質的ではありません。なぜなら、このケースは「ちゃんと運用されているなら裁量を導入する必要がない」ためです。

「監視保守」型は、常時人を貼り付けておくことに意味があるわけですから、フレックスの対象にすらならないはずです。
# 夜間勤務が多かったりすると給料は良かったりするのかな・・・?
# そんなことない???

・・・で、私はここ 2 年位は研究開発型の仕事をしているので、ホワイトカラー・エグゼンプション歓迎なのです。(それ以前は保守開発プロジェクトなどに参加していましたが、裁量ではなく残業手当がちゃんとついていました。こうしためぐり合わせはたまたま以外の何者でもありませんが、結構幸せな働き方になっているのかも???)

Posted by あかさた
誰かがやるかな~、と思っていたらやはりやる人がいました。据え置き型のゲーム機である Wii をノート PC のように持ち運べるようにしてしまったようです。分厚い B5 か A4 ノート PC くらいのサイズですかね。

最近、未踏の開発のために開発に耐えるノート PC がほしいとか思ってたんですけど、これはいいかも!
# 多分、遊びすぎてプロジェクトが崩壊します。(^^;

Posted by あかさた
iPhoneのダメなところという記事では、バッテリーやカメラの画素数など、基本的な性能に関する問題点が指摘されているようです。コンセプトはすばらしい製品なんだけどな~、こういう細かいところで少し届かないというのが残念ですね。もっとも、日本市場はまったく眼中にないのかもしれないですが。

Posted by あかさた
この番組で漫画家が出るのは珍しいような気もしますが、浦沢直樹が出ていました。やはりケンヂは浦沢だったのか。

さて、この番組、出てくる人の才能もさることながら、その仕事のスタイルというかプロ精神というかが並外れていて、ただひたすら感心するくらいしかできません。ただ、何かを追及する人のメンタリティが感じやすいつくりになっていたかも。線の描き方のこだわりとか。私の中では浦沢はかなり商業よりの作家なのですが、それでも、アーティストの色が濃く出ています。
一番感心したのは、自分の考えを押し通すところと、人の考えを受け入れるところのバランス取りが非常にうまくいっているところ(うまくいっているように見えるところ)です。

ところで、番組中で MASTER キートンに一切触れられていなかったのは、やはり政治的な意図があるのか。(苦笑)
# 個人的には一番好きな作品なので。

Posted by あかさた
ローマは気候変動で滅びたか?」を読みました。私はまだ読んでいませんが、塩野七生さんのローマ人の物語の最終巻が出たことに関する考察が、他のブログで出てきたので、弾さんがそれに反応して書かれているようです。

経緯を簡単にまとめてみましょう。

以下のブログ(raurublock さん)で、「塩野七生の悪いところは「キャラ萌え」の癖があるところです。」と書かれた。
http://d.hatena.ne.jp/raurublock/20070115/1168788415

弾さんは以下のように反応しています。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50740929.html

弾さんのブログを受けて、以下のブログでは「国家萌え」というなかなか面白い表現を使っています。ある意味、塩野さんの作品の性質を一番よく表している気がします。
http://blog.goo.ne.jp/evergreen_1978/e/af60af09d4d41cd47f14a67c69297b1c

そもそも、塩野さんがキャラ萌えになっておかしくなるのは、ユリウス・カエサルを取り扱うときぐらいで、ローマ人の物語や海の都の物語は、割と個人に依らない書き方をしているように思います。とはいえ、raurublock さんの書かれているような視点(環境要因を重視する姿勢)はすごく大切です。最近は、歴史関係は理系と融合することで面白い成果がどんどん出ています。小説にも取り入れていってほしいものです。(もっとも、小説に専門家のような広くて深い分析を期待するのも難しいし、面白くはないとは思いますが。)

どうもローマが滅びた理由というのは、複合的なものが絡んでいて、とてもですが私には説明することができません。この議論で出てきたローマが滅びた要因を以下にまとめてみます。(実際には要因は数え切れないほどあるのでしょう。貧富の差の拡大とか、傭兵制度とか、ローマ市民権の取り扱いとか。)
1. ローマのキリスト教化(by 弾さん)
2. 森林伐採(by 弾さん。でも、最大要因とはみなしていない・・・?)
3. 寒冷化(by raurublock さん)

(1) は、良いときのローマ人(※)であればローマは継続したという考え方になるでしょうか。それとも、他にもっとよい選択肢があり得たということでしょうか。仮に前者だとすると、塩野さんの海の都の物語を読むと感じるのですが、仮にローマ人がローマ人であり続けても永続的には維持できないのが国家というものだと感じます。

(2) とか (3) は、国家の疲弊には影響しますが、国家を滅亡に導くには人の手が必要です。もっとも、本当に環境変化で滅びてしまった国家もあるようですが、ローマのケースは当てはまらないでしょう。でも、国家の疲弊(制度疲弊など)はある意味、国家の滅亡の本質的な要因という気がします。もしかして、(1) もそういう流れで解釈するのかな・・・?

※ スキピオ・アフリカヌスのいた時代でしょうか。それともカエサルの時代でしょうか。ローマが一番よかった時代というのはいつだったんでしょうね・・・?

うーむ、早く最終巻を読まねば。

Posted by あかさた